世の中の大体のことはマンガでわかるようにできている

「マンガでわかる」っていう本、多いですよね。

基本的に私はマンガのような単純な考え方から絵やイメージで理解することが多いので、図表が一切ない文章だけの活字の本で勉強するよりも、所々で図示して説明してくれる本の方が自分にとってはわかりやすいです。

重厚感がある本は、それこそ「読破してやったぜ!」というドヤ顔をしたい見栄がモチベーションの一端となっている気がしてしまいます。ゆえに本を通して知識を得たいという当初の目的から逸れてくる気がするので、なかなか手がでません。とはいえ、世間で色々と言われている情報が独り歩きしているような場合は、原著にあたる、という姿勢が重要であるとは重々承知しているのですが。

さて、前置きが長くなりましたが、最近読んだ以下の「コンピテンシー面接」の話が非常にわかりやすかったので、未読の方や未来の自分の為にもここに書き残しておきたいと思います。
ポイントは、アビリティ (Ability) とコンピテンシー (Competency) の違いを明確に分けることです。

■まんがでわかるコンピテンシー面接
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アビリティ (Ability) とは、「能力」や「できること」ですが、コンピテンシー (Competency) も辞書を引くと、「能力」と出てきて違いがわかりづらいです。
コンピテンシーという用語には「職務で一貫して高い業績を出す人の行動特性のこと」という意味も辞書にはありますが、この「行動特性」というのがどういうものかがイマイチわかっていませんでした。(今回、上記の本を読んでスッキリしましたが。)

これらの違いは、例えばRPGやマンガのキャラクターをイメージするとわかりやすい気がします。

まずアビリティですが、「こういうことできるぜ!」と言っているだけです。白魔道士なら白魔法、黒魔道士なら黒魔法、剣士なら物理攻撃が使えますね。これらはアビリティです。
アビリティは履歴書に書けるような、わかりやすい"外面的な"能力です。特技がイオナズンだとすると、そう書けば良いのです。
現実社会だと、特定の資格・検定や語学力などが典型的なアビリティですね。わかりやすく、評価しやすい、表層的な”能力”です。

一方でコンピテンシーとは、一言でいうなら「やりきる力」です。成果を意識し、成果を実現できる力という説明が本の中でもありましたが、アビリティと違ってよりその人物の奥底にある"内面的"な能力です。私は両方とも「力」という方がわかりよいのですが、世界はそれを「行動特性」と呼ぶようです。※この用語のしっくりこない感じが、私が「コンピテンシー」をイマイチ理解できていなかった理由だと感じています。
何かしらの困難にぶつかった時にどういう風に切り抜けるか? を問われた時に自然とにじみ出てくる自分の中の行動原理といいますか、「どんな時でも、俺がどうにかしてやる!」という少年マンガの主人公のような熱いパッションが、すなわちコンピテンシーです。

アビリティは目に見えやすく、コンピテンシーは目に見えづらい。ただ、アビリティはコンピテンシーのような行動特性や、ひいてはマインド・価値観の土台の上に成り立つものなのです。

実際に会社で仕事をする場合は、アビリティが高いに越したことはないですが、仕事に関係ないアビリティは冷たい見方をすれば必要ないですね。アビリティは色々な種類を持てますが、自分の仕事に繋がるアビリティが少なければあまり意味はありません。
コンピテンシーは「なんとかする力」なので、仮にアビリティが低くてもコンピテンシーが高ければ、その人はどうにか仕事をやりとげようとします。自分にできないことは他人に任せるとか、受け身にならずに自分にできる最大限のことをやり遂げます。場合によっては、取り組むべき状況や周りの環境に働きかけ、前提条件や制約条件を変えてより前に進めることもコンピテンシーが高ければできます。

一部の方にしか伝わらないかもしれませんが、少年マンガの『烈火の炎』の話が良い例になるかと思います。(ネタバレにはなりますが、ご容赦ください)

主人公の烈火は名前の通り、火を使うことができ、それがアビリティです。
立ちふさがる敵を彼は自分のアビリティを駆使して倒していましたが、ある日に強敵の水鏡が現れます。水鏡は名前の通り、水を使うアビリティがありました。水を剣にして戦うのです。
この時烈火は苦戦し、一旦は敗北を喫します。火は水と相性が悪く、烈火のアビリティは圧倒的に不利だったのです。
しかし、烈火は諦めません。大切な仲間(姫)を救うため、もう一度立ち上がります。
同じことの繰り返しかと思われましたが、烈火は勇気を持って接近戦に持ち込み、なんと火で水を消すという奇策に出ます。強い火で無理やり水の剣を沸騰させようというのです。
結果として烈火は勝利を収め、連れ去られた仲間を連れ戻すことができました。

どうでしょうか? 烈火はコンピテンシーが高いとは思いませんか?
単純なアビリティだけの評価であれば、火と水なので水の方が圧倒的に有利ではあるのですが、その逆境を跳ね除けて成果を成し遂げるのは、彼の強さだと強く思います。
烈火に限らず、少年マンガの主人公は概してコンピテンシーが高いのではないでしょうか?
ONE PIECEのルフィも、アビリティはゴムゴムの実という微妙な能力ではありますが、最後は敵を討ち果たしてくれます。高いコンピテンシーですよね。早く海賊王になる姿が見たいですが、まだ道半ばという所でしょうか。


色々と話が逸れて長くなったかもしれませんが、コンピテンシーを鍛えること、たとえ困難な状況でもやり抜こうとする力は、最終的には「生き抜く力」にも繋がっている気がします。
仕事やキャリア形成の話にとどまらず、「どう生きるか」という生き様こそが、その人のコンピテンシーに繋がっていく、と感じました。
短期的なアビリティ向上だけではなく、中・長期的なコンピテンシー向上を目指し、誇り高く生きたいものですね。